駒林 修
会場/ギャラリー檜
会期/1999年9月13日(月)-9月25日(土)

午前11時30分一午後7時 <13日(土)午後5時30分まで> レセプション/9月13日(月)午後5-7時


 まとっているものをぬぎ捨てていくような解放感のあるストロークの重なり。作者の心拍・呼吸が聞こえてくるスピード感。風をきって進む身体的な心地よさと同時に未分化な始源の場へ向かう不安をもたたえています。

 駒林修は、81年の初めての個展以来ずっとキャンバスに油彩というオーソドックスな表現形式をとっています。使う絵の具も5〜6色の純色と白に限定されています。初期のスクリブルによる描法からストロークのみの集積による方法へと進みますが、画面作りの要素はつねに必要最小限にとどめら れています。  

 彼の関心は媒質(メディウム)による新しさの追求にあるのでもなく、また形式そのものの探求にあるのでもないようです。むしろ彼の場合、形式は内容に寄り添って展開してきたと言えるでしょう。内容とはいかにも曖昧な言いかたですが、それは何かを象徴する図像でもなく、あじわいや情緒といった質でもなく、観念でもなく、あえて言うならこのような意味合いとは別の意味において、作品を見る人の知覚・視覚を通して立ち表れるものと思われます。彼には観客との間に何らかの共有しうるものを希求する姿勢がつねにみられます。それも見る人がそれぞれの心にうかんだイメージを画面に映すというレベルではなく、また特定な場所・時をたまたま共有する共同体でのみ通用する記号としてでもなく、もっと深く根源的な場においてのという意味で……。  

 この目的のために、まず彼は画面を客観的に対象化することに自覚的です。これをふまえたうえで、身体、まさに世界と自己が接点をもつ直接的な場である身体を重要な要素として制作しています。そして、ストロークを重ねていくという一見単調な行為は自分自身をもぬぎ捨てていくことであり、細胞の遺伝子がもつ生命の記憶にまで達しようとの意志までもうかがえます。その極北で閉じられた回路が開かれるのをめざして。彼がつねに白の絵の具を使用するのは、その物質性を帯びた性格が、身体的で直接的な要素であるストロークがもたらすのめり込みを抑制し、距離をたもつのに有効だから ではないでしょうか。  

 今回の個展の作品には、ストロークの往復により自然にあらわれた形象ともとれるものが登場し目をひきます。何も対応するものを示さないストロークの重なりのなかに二次元的な形がおぼろげに見い出され共存する、この二つの異質な要素が絵画空間にねじれを与え、今までの作品とは違った奥行きをっくっています。  駒林修の一連の試みは、<身体一知覚一視覚>、この尽きない謎の追求であり、これを通して画面を新鮮な空間として開こうとする試みです。

ギャラリー檜 高木久仁子

ギャラリー檜 Gallery Hinoki
〒104−0061
東京都中央区銀座3−11−2 高木ビル1F
Tel.03-3545-3240  Fax.03-3545-3284