2004年

SPCgallery

個展より

 

表面のざらつきのなかで

  90年代の半ばから、それまでの壁から突き出るような、あるいは壁にそうように曲面と、時には切り落と されたような面を持っ立体的な形態を支持体として、その上に線や色彩を用いて描くという作品と平行して、 キャンバスや紙と言った平面の上に描く作品を作ってきた。
  立体的な作品を作ってきたときもそうだったが作る契機というのは、特別に名指しできるようなものを対象 化しているわけではないが、世界一現実をどの様に感じとらえているのか、どの様に認識しているのかということが、一つのきっかけになっているといっても良いだろう。
  しかし作品は、その事柄がそのまま翻訳するよ うに移し替えられる訳ではない。それらは支持体と表層、線とかたち、色彩とかたち、あるいはかたちとかたちの間といったものの関係のなかで解体され、表面のざらつきのなかで新たな意味を生成し、新たな世界を現 前させてくれる。そして契機となった現実一世界は明示的なものとして表象されることはなく、背後へとおしやられる。それにもかかわらず、立体的な形態を持つ作品では壁という現実を背景に、一定の空間を占有し、 かたちと空間あるいは時間の否応もない体験の知覚によって現実へと遡行していく。

  作品が観る者にとって常に「何か」についての表現であり、作品の背後にそれを求めるものであるならば、 「何を」描くかということが、どの様に描くかということに先行しながらも、どの様に描くかという絵画の実践のなかで形成される世界について、もう一度思い至らなければならないかもしれない。 キャンバスや紙の上に「何を」描くのか。先行する「何を」に、私は白身の作品を選択した。私自身の作品を対象化したのは、一つには作品を、壁という現実の背景、空間の占有、かたちと空間の関係性、そして時間といった現実の回路から、もう一度解き放ってみたかったからかもしれない。 それは、生への欲望とは裏腹な欠落感から異なる位相から観ることを欲しているのかもしれない。

  私白身の作品を再現的に描写することによって作品は壁から遊離し、そこでは何が描かれているのか、どの様 なものであるのかは見えても、それが何であるのかは不明のものとして浮遊し、絵画という表面のざらつきの なかで現れている。

2003.12.3 稲 憲一郎

 


 

 

 

2003年 SPCgallery 個展より

 

 

 

 

 

 

ギャラリー檜 地図(Gallery Hinoki MAP)

〒104-0061
東京都 中央区銀座3-11-2
高木ビル1F

TEL 03-3545-3240
FAX 03-3545-3284
email=oniyanma@ja3.so-net.ne.jp

トップページに戻る